Cisco Packet Tracerを活用したネットワーク演習

Cisco Packet Tracerは,Cisco社が提供するネットワークシミュレータです。
無料で利用でき,ネットワーク構築を練習することができます。
このサイトでは,Packet Tracerの利用方法と,CCNA対策に役立つ演習シナリオを紹介します。

演習02OSPF

構成図

課題

R1-3でOSPFによる動的ルーティングを行い,PC1⇔PC2の間の通信を可能にしてください。
なお,問題ファイルでは次の設定項目は完了しています。

パラメータ

●IPアドレス

ホスト名 I/F名 IPアドレス サブネットマスク
R1 G0/0/0 192.168.10.254 255.255.255.0
G0/0/1 10.0.13.1 255.255.255.0
G0/0/2 10.0.12.1 255.255.255.0
Lo0 1.1.1.1 255.255.255.255
R2 G0/0/0 192.168.20.254 255.255.255.0
G0/0/1 10.0.23.2 255.255.255.0
G0/0/2 10.0.12.2 255.255.255.0
Lo0 2.2.2.2 255.255.255.255
R3 G0/0/1 10.0.13.3 255.255.255.0
G0/0/2 10.0.23.3 255.255.255.0
Lo0 3.3.3.3 255.255.255.255

ホスト名 IPアドレス サブネットマスク デフォルトGW
PC1 192.168.10.1 255.255.255.0 192.168.10.254
PC2 192.168.20.1 255.255.255.0 192.168.20.254

●OSPF

ホスト名 プロセスID 有効化するI/F エリア passive I/F
R1 1 G0/0/0・G0/0/1・G0/0/2 0(バックボーン) G0/0/0
R2 1 G0/0/0・G0/0/1・G0/0/2 0(バックボーン) G0/0/0
R3 1 G0/0/1・G0/0/2 0(バックボーン) なし

手順

⑴ R1-3の物理I/FおよびループバックI/Fを有効化し,IPアドレスを設定する。

⑵ R1-3にOSPFの設定を行う。

⑶ R1のPC1に、R2のPC2につながるI/Fを,passive I/Fに設定する。

⑷ お互いがOSPFネイバーとなったことを確認する。

⑸ R1-2のルーティングテーブルを見て,R1にPC2,R2にPC1のネットワークへのルートが存在することを確認する。

⑹ PC1⇒PC2,PC2⇒PC1へtracertを行い,R1-R2間のリンクを経由して通信できることを確認する。

⑺ R1のG0/0/2の帯域幅を10Mbpsに変更する。

⑻ PC1⇒PC2へtracertを行い,R1-R3-R2間のリンクを経由した経路に変化したことを確認する。

使用するコマンド

解説

⑴ R1-3の物理I/FおよびループバックI/Fを有効化し,IPアドレスを設定する。

演習01の復習です。
ループバックI/Fとは,ルータ内部の仮想的なI/Fで,OSPFではルータIDの決定に使用されます。

R1# configure terminal
R1(config)# interface g0/0/0
R1(config-if)# ip address 192.168.10.254 255.255.255.0
R1(config-if)# no shutdown
R1(config)# interface g0/0/1
R1(config-if)# ip address 10.0.13.1 255.255.255.0
R1(config-if)# no shutdown
R1(config-if)# interface g0/0/2
R1(config-if)# ip address 10.0.12.1 255.255.255.0
R1(config-if)# no shutdown
R1(config-if)# interface Loopback0
R1(config-if)# ip address 1.1.1.1 255.255.255.255
R1(config-if)# exit
R1(config)#

⑵ R1-3にOSPFの設定を行う。

router ospfコマンドで,OSPFを起動します。
networkコマンドで,NWアドレスとワイルドカードマスクを使用してOSPFを有効化するI/Fを指定します。

R1(config)# router ospf 1
R1(config-router)# network 192.168.10.0 0.0.0.255 area 0
R1(config-router)# network 10.0.12.0 0.0.0.255 area 0
R1(config-router)# network 10.0.13.0 0.0.0.255 area 0

R2(config)# router ospf 1
R2(config-router)# network 192.168.20.0 0.0.0.255 area 0
R2(config-router)# network 10.0.12.0 0.0.0.255 area 0
R2(config-router)# network 10.0.23.0 0.0.0.255 area 0

R3(config)# router ospf 1
R3(config-router)# network 10.0.13.0 0.0.0.255 area 0
R3(config-router)# network 10.0.23.0 0.0.0.255 area 0
R3(config-router)# exit
R3(config)#

⑶ R1のPC1に、R2のPC2につながるI/Fを,passive I/Fに設定する。

OSPFでは,Helloパケットの定期的な交換による死活監視を行いますが, 対向機器がない,もしくはPCやサーバなどのエンドポイントである場合,Helloパケットを送るだけムダになってしまいます。 そこで,このようなI/FからはHelloパケットの送受信を止め,不必要な通信を行わないように設定することができます。 これを,passive I/Fと呼びます。
passive-interfaceコマンドで,物理I/Fをpassive I/Fに設定します。

R1(config-router)# passive-interface G0/0/0
R1(config-router)# exit
R1(config)#

R2(config-router)# passive-interface G0/0/0
R2(config-router)# exit
R2(config)#

⑷ お互いがOSPFネイバーとなったことを確認する。

show ip ospf neighborコマンドで,OSPFネイバーテーブルを確認します。
“Neighbor ID”はOSPFのルータIDを示しており,⑴で設定したループバックI/FのIPアドレスと同じ値になっているはずです。
“State”の値が“FULL”になっていれば,ネイバー関係が成立し,LSDBの同期が完了した状態です。
以下に,R1でshow ip ospf neighborを実行した結果を示します。

⑸ R1-2のルーティングテーブルを見て,R1にPC2,R2にPC1のネットワークへのルートが存在することを確認する。

これも演習01の復習です。show ip routeコマンドで,各ルータのルーティングテーブルを確認しましょう。
なお,先頭の「O」は,OSPFによって学習したルートであることを表しています。
以下に,R1でshow ip routeを実行した結果を示します。

⑹ PC1⇒PC2,PC2⇒PC1へtracertを行い,R1-R2間のリンクを経由して通信できることを確認する。

下図の通り,R1-R2間のリンクを経由していることが分かります。

⑺ R1のG0/0/2の帯域幅を10Mbpsに変更する。

OSPFはリンク状態型の動的ルーティングプロトコルで,メトリックとして帯域幅を元に算出されるコストを用いています。ある経路のコストの合計をパスコストと呼びますが,その計算には以下のようなルールがあります。

  • パケットがその機器から出力されるとき,出力I/Fの帯域幅に応じたコストを加算する。
  • デフォルトでは,コストは「100Mbps÷出力I/Fの帯域幅」で算出する。

この構成だと,全てのI/FがGbEであるため,100Mbps÷1Gbps=0.1ですが,切上げて1となります。しかし,例えばI/Fが10Mbpsだと,そのI/Fでは100Mbps÷10Mbps=10がコストに加算されることになります。

I/Fの帯域幅はbandwidthコマンドで変更することができます。このシナリオでは,R1のG0/0/2の帯域幅を10Mbpsに変更し,経路選択への影響を確かめます。

R1(config)# interface G0/0/2
R1(config-if)# bandwidth 10000
R1(config-if)# end
R1#

⑻ PC1⇒PC2へtracertを行い,R1-R3-R2間のリンクを経由した経路に変化したことを確認する。

PC1からPC2の通信は,下図の通りR1-R3-R2間のリンクを経由するように変化しました。

R1のG0/0/2の帯域幅が10Mbpsになったことで,

  • R1-R2間のリンク経由:10
  • R1-R3-R2間のリンク経由:1+1=2

となり,よりコストの少ない経路が選択されるようになったためです。

なお,PC2からPC1の通信は,帯域幅変更の影響を受けないので,変わらずR2-R1間のリンクを経由した経路をとります。コストは,あくまでも出力時に加算されるためです。