Cisco Packet Tracerを活用したネットワーク演習

Cisco Packet Tracerは,Cisco社が提供するネットワークシミュレータです。
無料で利用でき,ネットワーク構築を練習することができます。
このサイトでは,Packet Tracerの利用方法と,CCNA対策に役立つ演習シナリオを紹介します。

演習07HSRP

構成図

課題

まずは,R1-2にPAT・デフォルトルートの設定を行い,HSRPなしでPC⇔SVの通信を成立させてください。
次に,R1-2のG0/0/0にHSRPの設定を行い,R1をactive,R2をstandbyとするファーストホップの冗長化を実現して下さい。

なお,問題ファイルでは次の設定項目は完了しています。

パラメータ

●IPアドレス

ホスト名 I/F名 IPアドレス サブネットマスク
R1 G0/0/0 192.168.10.252 255.255.255.0
G0/0/1 11.11.11.1 255.255.255.252
R2 G0/0/0 192.168.10.253 255.255.255.0
G0/0/1 22.22.22.1 255.255.255.252
R3 G0/0/0 203.0.113.6 255.255.255.248
G0/0/1 11.11.11.2 255.255.255.252
G0/0/2 22.22.22.2 255.255.255.252

ホスト名 IPアドレス サブネットマスク デフォルトGW
PC 192.168.10.1 255.255.255.0 192.168.10.252
⇒手順⑷で192.168.10.254に変更
SV 203.0.113.1 255.255.255.248 203.0.113.6

●ルーティング

ホスト名 宛先IPアドレス・サブネットマスク ネクストホップ
R1 0.0.0.0 / 0.0.0.0 11.11.11.2
R2 0.0.0.0 / 0.0.0.0 22.22.22.2

●ACL

ホスト名 ACL番号 アクション 送信元IPアドレス・WCマスク
R1 1 許可 192.168.10.0 0.0.0.255
R2 1 許可 192.168.10.0 0.0.0.255

●NAT(PAT)

ホスト名 内部I/F 外部I/F 内部ローカルアドレス 内部グローバルアドレス
R1 G0/0/0 G0/0/1 ACL(ACL番号=1) インターフェース(I/F番号=G0/0/1)
R2 G0/0/0 G0/0/1 ACL(ACL番号=1) インターフェース(I/F番号=G0/0/1)

●HSRP

ホスト名 I/F名 HSRPグループ番号 仮想IPアドレス プライオリティ
R1 G0/0/0 1 192.168.10.254 105
R2 G0/0/0 1 192.168.10.254 100

手順

⑴ R1-2のデフォルトルートをG0/0/1に設定する。

⑵ R1-2で,192.168.10.0/24を送信元とするパケットをG0/0/1のIPアドレスに変換するPATの設定を行う。

⑶ PC⇒SVへのpingに成功することを確認する。

⑷ パラメータを参照し,R1-2のG0/0/0でHSRPの設定を行う。
  PCのデフォルトゲートウェイを仮想IPアドレス(192.168.10.254)に変更する。

⑸ HSRPのステータスを確認し,R1をactiveとしたHSRPグループが成立していることを確認する。

⑹ PC⇒SVへtracerouteを行い,R1を経由していることを確認する。

⑺ PC⇒SVへ連続pingを行いながら,R1のG0/0/0を無効化し,通信断ののち再びpingが成功することを確認する。

使用するコマンド

解説

HSRPは,複数のルータに同一の仮想IPアドレスを割当てることで,デフォルトゲートウェイの冗長化を実現する,Cisco社独自のプロトコルです。なお,同様の技術に標準化されたプロトコルであるVRRPがあり,これはCisco社以外の機器でも実装することが出来ます。

⑴ R1-2のデフォルトルートをG0/0/1に設定する。

まずはHSRPに入る前の下準備です。今回は,R1-2から左側を一つのLANとして,R1―R3間・R2―R3間をWAN回線に見立てています。したがって,R1-2にそれぞれデフォルトルートとしてR3と接続しているI/Fを指定する必要があります。なお,point to pointのリンクであれば,I/Fをデフォルトルートとして設定することが出来ます(PPPoE回線を利用するときに,dialer I/Fを指定するのと同様です)。

R1# configure terminal
R1(config)# ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 g0/0/1
R1(config)#

R2# configure terminal
R2(config)# ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 g0/0/1
R2(config)#

⑵ R1-2で,192.168.10.0/24を送信元とするパケットをG0/0/1のIPアドレスに変換するPATの設定を行う。

これはNAT(PAT)の復習です。演習04をご覧ください。

R1(config)# access-list 1 permit 192.168.10.0 0.0.0.255
R1(config)# interface g0/0/0
R1(config-if)# ip nat inside
R1(config-if)# interface g0/0/1
R1(config-if)# ip nat outside
R1(config-if)# exit
R1(config)# ip nat inside source list 1 interface g0/0/1 overload
R1(config)#

R2(config)# access-list 1 permit 192.168.10.0 0.0.0.255
R2(config)# interface g0/0/0
R2(config-if)# ip nat inside
R2(config-if)# interface g0/0/1
R2(config-if)# ip nat outside
R2(config-if)# exit
R2(config)# ip nat inside source list 1 interface g0/0/1 overload
R2(config)#

⑶ PC⇒SVへのpingに成功することを確認する。

R3は192.168.10.0/24宛のルートを持っていないので,NAT(PAT)が有効になっていないと,ICMPの応答が返ってこないはずです。PC⇒SVへのpingに成功すれば,ここまでの設定は正しく行われているはずです。

⑷ パラメータを参照し,R1-2のG0/0/0でHSRPの設定を行う。
  PCのデフォルトゲートウェイを仮想IPアドレス(192.168.10.254)に変更する。

ここからが,HSRPの設定です。HSRPグループ・仮想IPアドレス・HSRPプライオリティの設定を,R1-2のG0/0/0に行います。
HSRPグループとは,同一の仮想IPアドレスを割当てるルータの集まりのことです。HSRPプライオリティは,デフォルトは100で,0~255の間で設定でき,大きいルータがactiveとなります。
これに合せて,PCのデフォルトゲートウェイを,R1のG0/0/0の実IPアドレスである192.168.10.252から,仮想IPアドレスである192.168.10.254に変更してください。

これらの設定により,仮想IPアドレス「192.168.10.254」宛のパケットはactiveであるR1が担い,ダウンした際はactiveがR2に切り替り,引続き192.168.10.0/24にデフォルトゲートウェイが提供されるようになります。

R1(config)# interface g0/0/0
R1(config-if)# standby 1 ip 192.168.10.254
R1(config-if)# standby 1 priority 105
R1(config-if)# end
R1#

R2(config)# interface g0/0/0
R2(config-if)# standby 1 ip 192.168.10.254
R2(config-if)# end
R2#

⑸ HSRPのステータスを確認し,R1をactiveとしたHSRPグループが成立していることを確認する。

show standbyコマンドで,HSRPグループのステータスを表示することが出来ます。仮想IPアドレスが192.168.10.254で,R1がactive,R2がstandbyとなっていることを確認してください。

⑹ PC⇒SVへtracerouteを行い,R1を経由していることを確認する。

R1がactiveとなっているため,R1を経由していることを確認します。

⑺ PC⇒SVへ連続pingを行いながら,R1のG0/0/0を無効化し,通信断ののち再びpingが成功することを確認する。

HSRPグループに参加したルータは,helloパケットをマルチキャスト宛に送信し,activeルータの生存を定期的に確認しています。これが途切れると,activeルータがdownしたと判断し,standbyルータがactiveに切り替ります。
デフォルトでは3秒間隔でhelloパケットを送信し,10秒途切れると障害と判断する設定になっているので,切り替りまでには最大で13秒かかります。

PC⇒SVに連続pingを行いながら,R1のG0/0/0にshutdownコマンドを投入して無効化し,実際に10~13秒程度で通信が復旧するか確認しましょう。